秋葉原駅・電気街口を出て中央通りを渡り、“パーツ街”とも称される裏通りへ踏み入る玄関口。PCパーツショップやホビーショップをはじめ多種多彩な店舗が軒を連ねる、電脳街アキバに於いても取り分け雑多な一角に。
忽然と、黒塀に囲まれた瓦屋根の屋舎が凛と佇む。
季節料理「赤津加」。
創業昭和29年、秋葉原に神田青果市場があった時代から営業を続ける老舗大衆割烹。
漆喰の白壁と「菊正宗」の扁額が、半世紀を超す歴史を物語る。
ランチタイムは、焼き魚や若鶏竜田揚げといった和定食を中心に8種類を提供。ご飯のおかわり、大盛り無料。
藍染めの暖簾をくぐり、カラカラと引き戸を開けて店内へ入ると。
正午前のニュース番組が、淡々と時事を伝えていた。
コの字型カウンター×14席、4人掛けテーブル×5卓。壁には“やっちゃ場”時代の仲買の屋号札がズラリと掛かり、天然木の柱や黒玉石を敷き詰めた三和土の床は艶めかしい。
小上がり席と、2階には大座敷もある。
爪楊枝を背負うのは、おさる。
ふと見渡すと、楊枝挿しは干支十二支のようだった。
本日の煮魚定食¥850-
小鉢、香の物、お椀付き。
野菜たっぷりの味噌汁と、すり下ろし生姜をちょんと乗せた冷奴と、和風だしで頂く温泉卵。
煮魚は日替わりで、この日はメカジキのあんかけ。
片栗粉をまぶして軽く揚げたメカジキに、醤油味の野菜あんかけをとろりとかけて、山葵を添えて。
ふんわりと広がる、淡泊でクセの無い上品な旨味と、醤油の香り。
実に箸がすすむ。あぁ、日本の昼飯だ...!
山かけ定食¥780-
山かけは、夜の赤津加でも酒肴として人気の一品。
山葵と青海苔が風味を彩る、もっちりと粘り強い山芋とろろの下から。
宝石のような、まぐろぶつが。
あぁ、美味い...!
格式ばった堅苦しさは全く感じさせず、それでいて洗練された気品があり、これが今に残る古き良き下町神田の粋か。いつかこのカウンターで、杯を傾けるのが似合うような男になりたいものだ。
日々変化を続ける街の只中で、凛と。気丈で優しい母のような。
【店舗情報】
赤津加
■住所:東京都千代田区外神田1-10-2
■公式サイト:http://www.akatsuka.tokyo/
■公式Facebook:https://www.facebook.com/akatsukatokyo/