本記事は、神奈川県横須賀市のご当地グルメ「YOKOSUKA NAVY BURGER(ヨコスカネイビーバーガー)」を提供している飲食店をレポートするシリーズ記事。
今回は、京急横須賀中央駅前の繁華街エリアに店を構える「Younger Than Yesterday(ヤンガーザンイエスタディ)」!
2001年9月13日(木)にオープンした同店は、様々なジャンルの音楽ライブと共に食事が楽しめるライブハウス&レストラン。
昭和50年代に開館し、洋画の2本立て上映を中心におこなっていた映画館「横須賀東映パラス」の跡地を改装して使用しており、店内には随所に映画館時代のレトロな面影が残されている...!
広々としたステージと、プロミュージシャン仕様の音響&照明機材に加えて、9m幅の巨大スクリーンも健在!
バンド演奏はもちろんのこと、DJ、VJ、ダンス、演劇、落語といったパフォーマンスから、結婚式の二次会や各種発表会、懇親会、同窓会などの貸切イベントやパーティーまで、あらゆる用途に対応しているという。
元映画館とあって、通常時でも100席を超える客席数を誇り、立食形式ならば収容人数はさらに2倍強!
映画やテレビ番組の収録、プロモーションビデオの撮影、企業説明会や交流会の会場として、スペースのレンタルもおこなっているとのこと。
オーナーの佐々木滋さんは、なんと市内で歯科医院を営む現役歯科医師であり、同時にカントリーミュージック歴40年以上というミュージシャン!
毎月2~3回ほど、イベント日を除く水曜日に「ネイビーバーガーDay」と称して、自身の弾き語りライブを開催している。
カッコイイーッ!!
完全入場無料で、「ヨコスカネイビーバーガー」を注文すると、もれなくソフトドリンクが1杯サービスされるという内容。気軽にステージの下見に来てほしい、という意味合いも兼ねての開催だそうだ...!
▲ヨコスカネイビーバーガー¥1400- ※チーズをトッピングすると¥1450-
じゃーんッ!! これが「Younger Than Yesterday」の「ヨコスカネイビーバーガー」!!
デフォルトで、フライドポテトと自家製ピクルスがセットで付いているッ...!
どどぉぉぉーんッ!!
パリッと香ばしく焼き上げられたバンズは、市内のベーカリーに特注したオリジナル。空気をたっぷりと含んだ、ふんわりと軽い食感ながらも、噛むほどにもっちりとまとまって、小麦粉の甘味と風味が口の中で優しく広がる...!
パティはまるでハンバーグステーキのような厚みがあり、いかにも手作り!という、ゴツゴツとしたワイルドな仕上がりが特徴的。ナイフを入れれば、肉汁がじゅわわーり!!
スライスオニオン、輪切りトマト、フレッシュレタスの野菜3種類が、後口をさっぱりと演出してくれるため、ボリューム満点なのに気が付けばペロリッ!!
ケチャップとマスタードで自分好みに味付けていくのも「ヨコスカネイビーバーガー」の醍醐味だが、なにより、音楽の生演奏が最高の調味料なんだッ...!
第二次世界大戦後から米海軍を通じて、様々なアメリカ文化が現在進行形で広がっている横須賀にとって、ハンバーガーは歴史的に所縁の深い食べ物であり、「ヨコスカネイビーバーガー」は一介のご当地グルメの枠を超えた、地域文化を色濃く感じられるグルメブランドとして価値が高い。
自身も横須賀生まれ横須賀育ちだという佐々木さんに、開店の経緯や街への想いなどについて話を伺った。
▲佐々木さんは京急線汐入駅から徒歩約15分の不入斗(いりやまず)町内で、「佐々木歯科医院」を経営する65歳。
――― 佐々木さんは現役のお医者様でもあるとのことですが、まずは、「Younger Than Yesterday」開店の経緯を教えていただけますでしょうか。
佐々木さん:音楽繋がりで旧知の仲だったビルのオーナーに、「映画館の跡地をなんとか再活用できないか」と相談を持ちかけられたのがキッカケです。私もすぐに返事ができたワケではなく、1年ほど大変悩みました。こんなに大きな物件をね。
――― ミュージシャンとしての活動歴も長いとか。
佐々木さん:初ステージは小学校5年生でした。以前は音楽情報のラジオ番組でディスクジョッキーを務めたり、雑誌にカントリーミュージックについての連載を持っていたりもしたんですよ。
――― 音楽の世界に足を踏み入れた理由とは。
佐々木さん:私の学生時代は、当時はまだアメリカが徴兵制(※1973年に廃止)を敷いていましたので、横須賀に来る米兵さんたちの中には、文化人の方や、本業で音楽をやっていらっしゃる方も沢山含まれていたのです。そういった方が横須賀の街に落としてくれた様々なカルチャーと、間近に触れてきたことが大きいです。
――― 横須賀の街で生まれ育ったことが影響している。
佐々木さん:アメリカ人を実際に目にしたことがない若者が、まだ沢山いた時代に、横須賀の若者たちは日常的に接していたわけですから、影響を受けるのは自然な流れというか。ちょうど中学生の時にビートルズが初来日していますし、音楽そのものがブームだった世代でもあって。
――― なるほど。
佐々木さん:特に横須賀は、国内で最も多種多様な音楽があふれていた街のはず。もう一度いろんな音楽が集う場所を作りたい、という想いで「Younger Than Yesterday」をオープンしました。
▲「Younger Than Yesterday」は、黄色く塗装された派手な外観が目印の雑居ビル4Fにある。
▲かつて映画のチケット売り場だった場所は、現在はお惣菜屋さん。
▲ビルの館内も映画館時代の面影を残す、ノスタルジックな雰囲気だ。
――― 日本におけるジャズの発祥地と言われる、戦後に作られた米兵向け娯楽施設「EMクラブ(※1983年に日本に返還)」の存在も大きかったのでは。
佐々木さん:実は初期のEMクラブでアメリカ人がやっていた音楽を「ジャズ」と呼んでいたのは、日本人だけなのです。
――― えっ!?
佐々木さん:簡単に言ってしまえば、アメリカから入ってくる音楽をすべて「ジャズ」と呼んでしまっていた。カントリーミュージックもハワイアンもブルースも、もちろんジャズも、当時の日本人にとっては初めて体験する未知の音楽ですから、定義のしようがなくて、とりあえず全部「ジャズ」って言っちゃったんですよ。
きっとジャズがね、日本人的には1番カッコよく聴こえたんじゃないかな。
――― たしかに今でも、「ジャズ」ってちょっとカッコイイというか、オシャレな印象が伴うというか。
佐々木さん:「EMクラブ」は「U.S. NAVY Enlisted Men’s Club」の略、すなわち「米海軍下士官兵集会所」。上官たちではない、下士官の米兵さんたちが楽しむ場所として設けられた施設ですので、集まる人種も雑多だし、まだまだ差別も残っていた時代。当然、好む音楽もバラバラです。
“ジャズの発祥地”と言われていますけれども、実際には、アメリカの音楽文化がすべて同時に入ってきていて、いろんなアメリカンミュージックが演奏されていました。
――― リアルな話ですね。しっくりきます。
佐々木さん:そうじゃなきゃ、変でしょ。ジャズだけが入ってきただなんて。そうしたいろんな音楽を、見たり聞いたりして、吸収して消化したことが、あらゆる文化に寛容な“横須賀人気質”を生んだと思っています。
▲「EMクラブ」があった建物は1990年に解体。跡地は現在、「メルキュールホテル横須賀」や「横須賀芸術劇場」などが入居する複合施設となっている。
――― 「Younger Than Yesterday」でも、音楽だけにこだわらず、様々なジャンルの催しがおこなわれているそうですね。
佐々木さん:演歌をやった日もあれば、落語をやった日もあれば、お笑いライブをやった日もあります。「ココで表現をしたい!」と思って下さる方がいれば、どうぞステージをお使いください、というスタンスで、あらゆるパフォーマンスを応援したいと思っています。
――― “劇場型”ではなく、本物の“劇場レストラン”。
佐々木さん:お客さん同士で話し合いながら、食べたり飲んだりしながら、ステージを見て盛り上がるのは悪いことじゃないと思うし、興がのったらダンスを始める人もいるだろうし、自由に楽しんでほしいなって。逆に言うと、ただ単にライブハウスがあるだけで、勝手に人が集まってくるような時代ではもうない。
――― だと思います。
佐々木さん:“横須賀”のイメージとして、今でも横須賀の街にはライブをおこなう空間が沢山あるんじゃないかと、市外の方からは見られていると思うんです。その答えを、「本当にありますよ!」と出したかった。横須賀に足を運んでくれる人に、「ザ・横須賀なレストランがここにありますよ!」と、提示したかったという気持ちも強いですね。
――― 直訳すると「昨日より若く」ですが、「Younger Than Yesterday」という店名の意味は。
佐々木さん:作家の故・井上靖さんが、「年齢というものには元来意味はない。若い生活をしている者は若いし、老いた生活をしている者は老いている」と言われていましたが、すごくその通りだと思うのです。「もう自分のピークは過ぎちゃったな」と感じている人もいれば、その人と同じ年齢で、「まだまだこれからだ!」と思っている人もいる。
――― はい。
佐々木さん:たとえば同窓会に参加すると、私の年齢になっても、中学ならば中学生、高校ならば高校生の時の気持ちが甦るんですよ。昔のあだ名でよびあったりしてね。その時の気持ちって、参加者の誰もがいつもの日常よりも、絶対に若返っているはずなんです。
だから、昔好きだった音楽などに触れることによって、気持ちを老けさせないでいようじゃないかと。
――― 「いつまでも青春」とは、また違った。
佐々木さん:古代中国の思想では、人の一生を「青春、朱夏、白秋、玄冬」と、四季と色に当てはめて考えますが、そうした人生のステージごとの、白秋には白秋の、玄冬には玄冬の楽しみ方があると思うのです。
どんな年代にありながらも、日常とはちょっと違う若い気持ちを取り戻してもらいたいという意味を込めて、「Younger Than Yesterday」と名付けました。
▲お店の愛称は“YTY”。国内外で活躍するピアノデュオ「レ・フレール」の斎藤兄弟(※横須賀市出身)をはじめ、同店から巣立ったミュージシャンも多いとか。
――― 「ヨコスカネイビーバーガー」を、お店で取り扱おうと思った理由は何でしょう。
佐々木さん:私にとってのハンバーガーの原点は、子供の頃にどぶ板通り周辺で食べた、伝統的なアメリカンハンバーガーです。まだハンバーガーのファストフードチェーン店も日本に上陸していませんでしたし、当時横須賀で育った人たちは皆、口をそろえて同じことを言うのではないでしょうか。
――― ちなみに「マクドナルド」が国内第1号店を開業したのが、1971年です。
佐々木さん:そんな思い入れもあり、ご当地グルメのなかでも「ヨコスカネイビーバーガー」に、取り分けて“横須賀らしさ”を感じて、販売を決めました。
――― その他のメニューは、どういった料理を提供されていますか。
佐々木さん:かしこまったものではなく、ピザ、スパゲティ、タコライスなど、音楽を聞きながら気楽に食べられる料理を出すようにしています。オリジナルカクテルもご用意していますよ。
▲「ナポリタン(¥850-)」も定番の人気商品。
▲タマネギ、ピーマン、マッシュルーム、ベーコン、ソーセージが入った、“昔ながらの喫茶店風”だ...!
▲ケチャップと粉チーズの香りが、なんともたまらないッ!!
▲フォークにぐるんぐるんと巻き付けて、バクバクといただく!!
――― 近年の横須賀の街に対して、思うことはありますでしょうか。
佐々木さん:横須賀市は人口減の問題が深刻(※2018年2月、約41年ぶりに40万人を下回った)なのですが、全国どこの街でも共通して、楽しければ人が集まり、人が集まれば産業ができ、産業ができれば人口も増える、というのが基本原理だと思うのです。
コレが無いから人が集まらないんだ、ではなくて、楽しさに魅かれて人が集まってきたから、アレが必要だよね、コレも必要だよねと、都市構造が整っていくのが自然。そこからやり直さなければいけない、と考えています。
――― 観光地としての注目度は、年々増しているように感じます。
佐々木さん:海も山もあって風光明媚だし、気候も穏やかだし、都内に通うのにも交通の便がいいし、住む魅力も満載の街なんですよ。私としては「横須賀と音楽」は切っては切れない関係だと思っていますので、音楽の楽しさを伝えることが、横須賀の楽しさを伝えることに繋がればいいなという情熱をもって、これからも精力的に活動していくつもりです。
もう年なので限度がありますけどね、あはは。
――― この特集取材で、60歳以上のオーナーさんと何人かお話しさせて頂きましたが、皆さんとてもお若いなと感じます。
佐々木さん:そうですかね、嬉しいなあ。たぶん皆さん、昔の横須賀の楽しさを知っていらっしゃるからじゃないかな。「自分が若い頃はあんなに楽しい街だったのに!」という気持ちを共通して持っていて、その楽しさを、今の若い人たちにも味わわせてやりたいなって、心のどこかで思っているのではないでしょうか。
――― もっと街を盛り上げたいという気持ちが。
佐々木さん:私たちにとっての懐かしいコンテンツが、若い人たちにとっての新しいコンテンツになるパターンもありますから、出来ることはあるはずだと。
――― 特にここ数年、音楽だったりファッションだったり、“再ブームのブーム”が起きています。
佐々木さん:日本人は「イイと思ったものをイイと言うこと」に、勇気がいります。「この人たちはプロ?」「この演奏って技術的に上手いの?」と、そんなことばかりを気にしちゃう国民性でしょう。
変に構えずに、心の壁をなくして、人種を問わず、年齢を問わず、音楽を問わず、パフォーマンスを問わず、みんなが楽しく仲間になれるような街であってほしいと願っています。
【ヨコスカネイビーバーガー特集 まとめ記事】
■ご当地グルメ「ヨコスカネイビーバーガー」 全店舗取材レポート まとめ記事
【店舗情報】
Younger Than Yesterday(ヤンガーザンイエスタディ)
■住所:神奈川県横須賀市大滝町2-17 エルスビル4F
■営業時間:18:00~イベントにより異なる
■定休日:月曜
■公式サイト:http://www.yty-jp.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/yokosukayty
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